前々回にご紹介した南城市玉城仲村渠にある『仲村渠樋川』を見学した後、次に向かったのは、仲村渠集落の南側に隣接する百名集落です。
百名集落内にも拝所や井戸跡などの史跡が数多く点在しているんですが、今回はその中の数ヵ所を回ってきました。
沖縄県南城市玉城百名にある
『大前之殿とジャジュンの文化財群』☆
南城市玉城百名の『百名入口』というバス停近くにある『天神社五穀之宮大前之殿』。 |
こちらは、南城市の県道137号線と86号線がぶつかる『垣花』の交差点から、県道137号線を同市玉城百名向けに進み、約1.3㎞ほどの距離にある『百名』の交差点を右折、そしてそこから約120mほど進むと道路沿い左側にあります。
『天神社五穀之宮大前之殿(ウフメーノトゥン)』全景。 |
『天神社五穀之宮大前之殿』の入口。 |
『大前之殿』と記された石碑。『平成十三年十二月二十六日建立』とも記されていました。 |
≪百名の4つの殿 根所前之殿、安次富之殿、ジャジュン之殿、神屋里主所之殿≫
≪百名には4つの殿があります。なぜでしょうか?
まず部落時代に、大前(うふめー)家(根処前之殿)と安里(あしとぅ)家(安次富之殿)が領主となり発展していったと考えられています。
『大前之殿』の鳥居の横に設置されていた説明板。 |
第二尚氏(尚真王)の頃に中央集権下で地方の城主が首里に住まわせられるようになると、首里王府から神谷村(百名村)地頭職を賜った周氏島袋親雲上(ぺーちん)(後の神谷里主)が力を持つようになります。
このような経緯から、「殿」と名のつく旧家が4ヵ所も存在するのです。
説明板に掲示されていた昭和21年頃の『根所前之殿』の写真。 |
百名白樽という人が久高島に渡り穀物を発見したという伝説が百名にはありますが、この白樽の生家が本部です。
戦前までは久高島と本部家等とは、年3回、贈答しあう慣わしだったといいます。
南城市教育委員会 平成27年3月設置≫
・・・とありました。天神社五穀之宮大前之殿(ウフメーノトゥン)。 |
その2基の灯籠の間を通り、社に近づいて内部の様子を伺うと・・・
祭壇の上には「大穂米之屯」と記された板と3基の香炉等が置かれていました。 |
また、祭壇の左側には線香などを焚く香炉があり、そこに稲穂の束が立て掛けられていました。
祭壇の左隣には、線香などを焚く香炉があり、そこに稲穂の束が立て掛けられていました。 |
そして、最後にこちらの『大前之殿』を参拝し、社の前の広場で棒術を奉納したり、祝賀会を催すんだそうですよ。
(※参考⇒『百名区ほのぼの日記』)
安里之殿(安次富之殿)。 |
※『安里之殿』と『本部』の写真は別の日に撮影してきました。
『安里之殿(安次富之殿)』の拝所。 |
※大きな屋敷の敷地の一画にあったため、拝所内部は見学しませんでした。
『安里之殿』がある敷地内にあった『百名小学校発祥之地』と記された石碑。 |
現在の『百名小学校』は、この場所から西側の直線距離にして約150mほどの場所にあります。
もともと百名集落の小学校は、この場所にあったのでしょうね。
『本部』と称される拝所。 |
この日は、すりガラスの扉が閉まっていたため、内部を拝見することは出来ませんでしたが、内部には数基の位牌や香炉などが納められているようです。
(※参考⇒『百名区ほのぼの日記』)
この『本部』の拝所まで見学させて頂いた後、『大前之殿』から南向けに約90mほどの距離にある『百名公民館』前へと移動しました。
『百名の焚字炉』・『大城ガー』・『ちんたかー之御嶽』がある公民館の敷地の一画。 |
『焚字炉』・『大城ガー』・『ちんたかー之御嶽』がある場所の入口には、2つの説明板があり、まずは向かって左側の『ジャジュンの文化財群』と題された説明を読んでみることに・・・
『ジャジュンの文化財群』。 |
≪ジャジュンの文化財群≫
≪ジャジュンは高台という意味で、この一帯が小高くなっていることからこう呼ばれています。集落内でも要所であり、多くの文化遺産が集積しています。①石獅子(シーサー):集落を火災や疫病から守るための魔除け。元々百名には5体のシーサーがありましたが、現存するのは2体です。
『百名の石獅子』は公民館の敷地北東側にあります。 |
公民館敷地内の北東側にある『百名の石獅子』。 |
『百名の焚字炉』・『大城ガー』・『ちんたかー之御嶽』がある場所。 |
百名の焚字炉。 |
『ちんたかー之御嶽』。 |
『大城(うふぐすく)ガー』。 |
『百名公民館』の南南東側約100mほどの距離に位置する『大城グスク』跡。 |
南城市教育委員会 平成27年3月設置≫
・・・とありました。また、『百名の焚字炉』の説明板も設置されていたので、そちらも読んでみると・・・
≪焚字炉 南城市有形文化財(建造物)≫
≪フンジロー(フンジルー)または惜字炉(セキジルー)ともいいます。文字の書かれた不用紙を焼くための炉で、19世紀中頃に中国から敬惜字紙の風習が伝わったものです。一説によると、冊封使の「林鴻年(りんこうねん)」が字紙を路上に捨てずに敬うことを説き、この紙片を大切に扱わせるため炉を設置し、これに入れて焼くことから始まったといわれています。
『焚字炉』の説明板。 |
高さが114㎝、幅は72㎝あって四枚の石灰岩の平石を組んで造られており、前に長方形の紙を入れるための穴と、後方には排煙のための円形をした穴が開けられています。
平成6年2月23日指定 沖縄県南城市教育委員会≫
・・・とありました。『百名の焚字炉』や『大城ガー』などを見学した後、『ジャジュンの文化財群』の説明板がある場所から西側に少し離れた場所へ移動しました。
『ジャジュン之殿(ザズンの殿)』。後方に見える建物が『百名公民館』です。 |
社のとなりに『ザズンの殿』と題された説明板があったので、そちらを読んでみると・・・
『ジャジュン之殿』の横に設置されていた説明が記された石碑。 |
≪ザズンの殿≫
≪この社殿は玉城村字百名の拝所「ザズンの殿」です。古くは「ジャジュンノ殿」「茶屯之殿」とも書かれました。殿は御嶽の山に鎮座する祖先神を村落内にお招きしておもてなしをする祀りの場所です。
昔から毎年旧暦二月三日の麦のウマチー(穂祭)と五月六月の稲のウマチー(穂祭)に玉城ノロの主宰で村人がうちそろって盛大な祭祀を催し、村建ての神様に感謝をささげ、農作物の豊作を祈願しました。
ジャジュン之殿(ザズンの殿)の内部。2基の香炉が納められていました。 |
大正・昭和時代になると、国の一村一社の方針で、殿はお宮とか郷社とか呼ばれるようになりましたが、おしくも去る大戦で破壊されてしまいました。
現在の殿社は、百名区民の心を一つに結ぶ聖地(シンボル)として大事に崇め区民の文化財として末永く受け継がれることを願って復元されたものです。
玉城村字百名≫
・・・とありました。香炉が置かれた祭壇の左側には3基の霊石が置かれた『火ヌ神』を祀る拝所となっていました。 |
この『ジャジュン之殿』まで見学させて頂いた後は、一旦クルマへと戻り、集落の西側へ移動しました。
百名集落西側の道路沿いにある『百名之獅子』。 |
真横からみた『百名之獅子』。 |
≪百名之獅子≫
≪シーサーは中国より14、5世紀頃琉球にもたらされた。17世紀頃各地に広がったといわれ、百名区には5体のシーサーが昭和30年代まであり、現存するシーサーは2体である。
(1体は公民館敷地内)そのうちの1体が百名3班(字百名756番地付近)に設置されていたのがこのシーサーです。
台座部分に設置されていた『百名之獅子』と題された説明板。 |
近年区民の発案により移設が検討され、百名区を火災や疫病から守るために(魔除けとして)区の出入り口であるカチャ原割取(ワイトゥイ)(現在地)に設置された。
2010年8月吉日≫
・・・とありました。百名之獅子(ヒャクナヌシーサー)。 |
・・・と、この『百名之獅子』まで見学した後、この日はそのまま百名集落を後にし、次の目的地へと向かいました。
んで、この日は見落としてしまっていた『百名公民館』近くにあるという『大城グスク』を、後日、再び見学しに行ってきました。
『大城グスク』。 |
グスク域北側には小道が走っていて、側壁は石垣が設けられていました。 |
んで、第二尚氏頃に中央集権下で地方の城主が首里に住まわせられるようになった際に、地頭職を賜った周氏島袋親雲上(神谷里主)が力を持つようになったと説明板には記載されていたので、もしかすると、この人物が居城していたのかもしれませんね。
※あくまでワタクシの憶測なので、定かではありませんが。。。
北西側から見た『大城グスク』。中央に大きなガジュマルの木が立っています。 |
過去にこちらを訪れたことのある方のブログや、先述した『ジャジュンの文化財群』の説明によると、グスク域内や頂部にはいくつかの古墓や拝所があるとのことです。
グスク域の外から内部の様子を伺うと、ところどころ拝所っぽい場所が見えました。 |
グスク域横を走る道路上から見た『大城グスク』遠景。 |
グスク域東側の道路沿いにあった先の尖った石灰岩。 |
石灰岩の根元にあった窪み。入口を塞ぐように石積みが作られていました。 |
・・・と、ここまで見学した後は、クルマに乗り込み、百名集落を後にしました。
今回ご紹介させて頂いた百名集落内には、まだまだ拝井泉や御嶽などの史跡が数多く点在しているとのことなので、また時間を作ってそちらの方も散策してみたいと思います。
今回は少し長くなってしまいましたが、そろそろこの辺で。。。でわでわ☆★☆
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